老化について
1、骨、筋肉、関節の老化とは
手足を動かして歩く。日常生活で当たり前の動きですが、中高年以降ある日突然、膝が痛くて歩けなくなったり、つまずいただけで骨折したりすることが、誰にでも起こり得ます。
骨、関節、筋肉、神経から成る「運動器」の連携機能により、私たちは、歩いたり、座ったり、立ったり、自由に体を動かしているのです。
加齢に伴い、骨量や筋力などが低下するなど、運動器は確実に老化していきます。
2、骨の老化
骨の老化には大きく二つ原因があります。
一つは骨量の減少です。骨は破骨細胞が古い骨を壊して骨芽細胞が骨を作る「リモデリング」という骨代謝を繰り返し、骨が新しく入れ替わっています。しかし、人生の中で最も骨が活発に作られ、骨の量が多い20代をピークに、骨量は減少していきます。
3、もう一つの原因は骨質の低下です。
同じ骨密度であっても、60歳の女性と80歳の女性を比べると、80歳の女性の方が骨折しやすいのです。骨はカルシウムやコラーゲンなどの成分により構成されています。いまだ骨の質を決めているのが何かは十分には分かっていませんが、加齢により質の悪いコラーゲンが多くなり、そのため骨質が悪くなるのが原因の一つではないかと考えられています。
4、関節の老化
骨と骨のつなぎ目である関節も加齢に伴い変化していきます。骨と骨がぶつかり合わぬよう、すれ合う動きをスムーズにし、関節への衝撃を和らげるクッション的役割を持つ関節軟骨の水分量は減少し、厚みと弾力性も低下します。
また、関節軟骨が痛んでくるのと同時に、関節まわりの靱帯(じんたい)は柔軟性を失って硬化が進行し、筋肉自体の伸展性も悪化しす。その結果、関節が動く範囲(可動域)が狭くなっていくのです。
5、筋肉の老化
加齢により筋肉の量は低下していきます。筋力は、30代から減り始め、50代で急速に減少していくことが知られています。
特に腕よりも脚、なかでも膝を伸ばす力(膝伸展力)の低下が著しくみられます。
背筋力については、女性は20代に比べ、40代で70%、50代では50%にまで減ります。
6、筋肉は速筋線維と遅筋線維という2種類の筋線維によって構成されています。
持久力に優れた「遅筋」の低下は緩やかに進み、瞬発力やパワーに富む「速筋」の低下は急速に進行します。
そのため、「飛んできたボールから体をかわす」といった急な反応が難しくなるのです。
7、これら骨、筋肉、関節の老化には、痛みも症状もありません。
しかし、若い頃と変わらないと思っていても、「町内の運動会で走っていたら、足がついてこなくてけがをした」ということがよく起きます。
まずは、「運動器は誰もが等しく老化する」事実を受け止め、定期的な運動や食事療法などにより、予防・改善することが大切です。
病気やけがで寝込んだりすると一気に筋肉量が減るので、継続して健康な状態を保つのも重要でしょう。
8、骨と関節にとって、筋肉の維持が大切です。筋肉量が低下すると、骨量も減ります。関節は筋肉によりバランスを保っています。
膝回りの太ももの筋肉が減ると関節のバランスが上手にとれずに軟骨に直接負担がかかり、痛みが出てきます。