東洋医学シリーズ「五臓六腑」
娘
六腑のそれぞれの働きは?
お父さん
その前に六腑というものがどういう働きをしているかという話からしよう。
六腑は消化と吸収を担っているんだよ。
娘
食べ物の通り道ってこと?
お父さん
そうだね。
その前に東洋医学の臓器は西洋医学の臓器と概念は同じではなく臓器がもつ
機能を重視しているんだよ。
六腑にには胃、胆、小腸、大腸、膀胱、三焦があてはめられているね。
まず食べ物が胃に入って消化をして小腸に送る。胆は消化吸収を助ける機能を
持っているね。小腸はさらに細かく消化し吸収をして栄養分を五臓の脾に送り不
要物の水分は膀胱へ送って尿を貯めて排尿する。固形物は大腸へ送って水分
を吸収して便を作るんだよ。三焦というのは気と津液の通り道のことだよ。
娘
六腑がうまく働かないとどんな症状がでるの?
お父さん
じゃあ順番に胃から話そうか。
食べ過ぎや偏食などで胃の消化が不十分だと腹痛や吐気がしてくるよね。
それに慢性化すると胃の機能全体が衰え食欲不振になってしまうね。
胆の機能が悪くなると飲食物が胃から逆流したり、胆汁が口にあふれて苦くなっ
たりするね。また黄疸症状が見られることもあるね。
小腸の機能が悪くなると飲食物の消化吸収がうまくいかなくなり腹痛がおきたり
するね。それに栄養物と不要物をわけられなくなり便にも影響するね。
大腸の働きが悪くなると下痢や便秘の症状が出てくるね。
膀胱の働きが悪くなると排尿困難や頻尿、失禁が起きてくるね。
三焦の働きが悪くなると水分代謝が低下し尿量減少やむくみがでてくるね。
娘
じゃあ五臓は?
お父さん
その前に五臓と六腑の関係について説明しておこうね。
腑は表に、臓は裏に属し陽は表を陰は裏をつかさどるんだよ。ひとつの腑
( 陽, 表)にはひとつの臓(陰、裏)が配当されているため一対の臓腑は表裏関
係にあるとされているんだね。
その組み合わせは胆には肝、小腸には心、胃には脾、大腸には肺、膀胱には腎
が配当され表裏関係にあるとそれだけで関係が深く、病態にも影響しやすいとい
えるんだね。
お父さん
では今回は五臓の話をしようね。
五臓には胃や腸で取り出された水穀の精微を材料に気、血、津液を作り貯える働きがあったよ
ね?
娘
うん。
お父さん
五臓も六腑と同じように臓器がもつ機能を重視しているので西洋医学の臓器とは
同じではないからね。では順番にみていこう。
肝の働きは全身の気のスムーズな調整をはかり(疏泄作用)と血流量を管理する(蔵血作用)が
あるんだね。疏泄(そせつ)の働きが悪くなると消化不良や感情が不安定になるんだよ。蔵血(ぞう
けつ)作用の働きが悪くなると筋力低下が起こるんだね。また肝は目と経脈でつながっているので
充血などもおこるね。
心の働きは血を全身に巡らせ精神をコントロールする作用があるんだよ。血を巡らせる作用が低
下すると物忘れや動悸がおこり、精神をコントロールする作用が低下すると精神不安がおこるね。
脾の働きは消化吸収をコントロールし運搬は担う働き(運化作用)、水穀精微を持ち上げる(昇清作用)、
血が漏れ出さないようにする(統血作用)があるんだね。運化昇清作用が低下すると気、血
の生成が不十分となり臓腑や組織に必要な栄養が届かなくなり無気力や貧血になるね。また表裏
関係にある胃にも影響し食欲不振など腹部にも影響がでてくるね。また統血作用が低下すると血
尿、血便不正出血、月経過多などがおこるね。
肺の働きは呼吸と気、血、津液を拡散(宣発、粛降作用)し、また邪からの防衛(衛気)など全身
をコントロールしているんだね。衛気が低下するとカゼを引きやすくなり、宣発、粛降作用が低下す
ると息切れ、むくみ等がおこるね。
腎の働きは生殖機能と発育成長を担い生命活動のエネルギーの源となり、腎精を貯蔵(蔵精作
用)と全身の水分代謝をコントロールする(主水作用)があるんだね。腎精不足になると歯や骨がも
ろくなり物忘れなどの老化に、主水作用が低下すると排尿疾患がおこるね。